ドンぐり映画レビュー】スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話【ドラマ_U-NEXT※ネタバレあり

映画

U-NEXT視聴
実話ドラマ
自閉症ケア施設を守った男たちの実話!
福祉を学ぶすべての人に観てもらいたい。
もちろん学んでいない人たちにも。

ざっくり映画評価

感動 ★★★★☆
社会勉強 ★★★★★
総評 ★★★★☆ 4.3

この主人公の行動こそ福祉の考え方の原点なのではないかと思います。
本作は、主人公ブリュノたちの自閉症児ケア施設に国の監査が入り、施設の日常と監査員の調査が並行的に進んでいきます。
監査パートでの監査員の質問に対する、ブリュノやブリュノを取り巻く関係者の意見を聞いていると胸が苦しくなりました。良い意味で、です。

ドンぐり
ドンぐり

あの名作『最強のふたり』の監督が手掛ける傑作ということでずっと気になっていました。
ようやくU-NEXTで視聴が叶いましたが最初から最後まで大満足の作品でした。

主人公ブリュノが受け入れている自閉症児はどの子をとっても、困難ケースです。

受け入れている事実だけでも称賛に値します。

それ以上に注目してほしいのは、彼らの福祉に対する姿勢です。

現場にいるとつい、忘れてしまいがちな福祉の精神を思い出すことができる作品でした。

映画概要

◇題名
 スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話(2020)1時間54分
◇配信元
 U-NEXT
◇監督
 オリヴィエ・ナカシュ、エリック・トレダノ
◇脚本
 オリヴィエ・ナカシュ、エリック・トレダノ
◇出演者
 ヴァンサン・カッセル、レダ・カテブ、エレーヌ・ヴァンサン、アルバン・イヴァノフ、フレデリック・ピエロ、ヘレン・ヴィンセント
◇あらすじ ※ここにはネタバレありません。
 ブリュノは毎朝施設の切り盛りで忙しい日々を送っている。ブリュノが運営している自閉症児ケア施設〈正義の声〉を経営しているのだが、どんな困難ケースも断らないため、いつも受け入れ待ちが発生しているほど。〈正義の声〉で働くのは、ブリュノの友人のマリクに教育されたドロップアウトした若者たちだ。ふたりは、社会の制度の狭間にいる子供たちを、救おうと日々奔走している。その成果は現れ、施設で働いている問題児だったディランと、施設を利用している中で最も重症のヴァランタンの間に、絆が芽生えようとしていた。だが、無認可・赤字経営の〈正義の声〉に監査が入ることになり、閉鎖の危機が迫る。さらに、ディランが目を離した隙にヴァランタンが失踪するという事件が起きてしまい──。ヴァランタンはどこへ消えたのか? そして施設はこのまま閉鎖に追い込まれるのか? 救いの手が必要な子供たちの未来はどうなるのか──?

自閉症(自閉スペクトラム症)

自閉症(自閉スペクトラム症)の特徴は多種多様であり、一人ひとりが異なります。
また、発達の段階に応じてもあらわれ方も異なります。
代表的なものとしては以下のような特徴が挙げられます。

☆社会的な関係のもちづらさ
☆コミュニケーションの困難
☆特徴的な行動や動作
☆活動や興味の範囲が狭い
☆変化に対する不安や抵抗
☆社会的なイマジネーションの課題
☆感覚の過敏さと鈍さ


データにより異なりますが、人口に対する自閉スペクトラム症の方は、おおよそ20人~40人に1人(2.5%~5%)は存在する可能性が指摘されています。

※一般社団法人日本自閉症協会HP参考

日本での障がいのある子どもを受け入れる放課後デイでの事故は?

2023年1月23日付、読売新聞記事によれば、障がいがある子どもを放課後や休日に受け入れる「放課後等デイサービス(放課後デイ)」で、子どもの死亡や負傷などの事故報告が2012年度の制度開始以降、全国で少なくとも約4100件に上ることが読売新聞による自治体への調査でわかっているとのこと。
そのうち、9割は負傷事故とのこと。
命を預かる仕事はどのような場合においてもとても大変だということが伺えますね。

福祉の精神とは?ドンぐりの長い感想

ドンぐり
ドンぐり

ブリュノたちは認可されていないかもしれない、赤字経営かもしれない。
それでもそのサービスを必要とする人々って、実は多く存在するんです。
サービスを受ける権利があっても受けられない人々。
この方々を救えるのは国でしょうか?誰なのでしょうか?
難しいテーマです。

重度の自閉症児と対応する職員の安全を確保しながら施設を運営していく。
これってものすっごく大変なことです。
今の世の中では、ブリュノたちがやっている施設運営に対して賛否両論激しそうですよね。
でも、実際にこのサービスを受けているご利用者の家族・近しい人にとってブリュノたちの施設の存在は本当に救いなんだと思います。何件も何件も言いにくいことや話したくないことも伝えて助けを求めてもすべて断られる。断られなくても薬漬けでほぼ監禁状態。それってご家族はどんな気持ちなんでしょう。それって人間の生き方なんでしょうか。経験したことのある人にしかわからないですよね。
私はブリュノたちがやっていることが、これぞ福祉だって胸が熱いようななんだか苦しいような、そんな気持ちになりました。

後半、無資格の支援員がホテルの部屋で目を離した隙に自閉症児の子(ヴァランタン)がパニックを起こし行方不明になりました。
結果として、高速道路で発見され保護される場面に繋がります。
これは珍しくなく、現場ではいつだって起こり得る可能性のある事故場面です。
視聴しているだけの私でも冷や汗が出ました。
この事件も監査で認可されない一つの理由として取り上げられます。
監査員も仕事なので仰ることはでごもっともだと思います。
でも、じゃあこのサービスを待っている人々はこれからどうしたらいいのか。
お互い仕事だから譲れませんよね。
これはグレーゾーンとして黙認にすることしかできない。
この映画の結末としては、黙認からの社会的に制度が整備されていくことにつながった、というように表現されていました。

今回の黙認は、社会の中でも白黒はっきりつけてはいけない問題だと思いました。
世の中にはグレーであるべき問題が多くあると思いますし、私はそれが最適解だと思って今作を観ていました。

ブリュノが認可を出せない監査員に対し、
ならどうして非認可の施設運営している自分たちに関係機関から連絡がくるんだ?
そう問いかけるブリュノに監査員は回答がもちろん出せません。
さらに、それならあなたたちが全員引き取ってくれ、とブリュノが監査員に対し感情的に訴えるシーンが続きます。このシーンに胸があつく、苦しくなりました。
でもこれが全てだと思いました。
実際引き取れるわけがないんです。
どの施設も断った困難ケース。この実態もよくわかります。
正直施設の運営側からすれば、現代なら特に、ご利用者本人、そのご家族、職員、その職員のご家族、国などの行政、地域の住民、法律や制度いろいろなものの間にはさまれます。
【自分たちが提供したい福祉】これを実現することの困難さは想像すらできません。

この作品は、福祉の実態を再現度高く表現していると思います。

福祉を少しでも勉強している方、これから目指す方、そうでない方も一度は視聴していただきたい作品だと思いました。
もっと広く多くの方に観てもらうべき作品です。
福祉って素敵だな、そんな気持ちを再度抱かせてくれました。
以上、ドンぐりでした。

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